ブラッシングについて

ブラッシングの大切さ

新型コロナウイルスによる外出制限、その他で家庭にいる時間が大幅に増加した方々に今お勧めしたいこと、それはブラッシングです。

今まで忙しさにかまけて(?)短時間で済ませていたかもしれない歯磨きの時間を大幅に増やしていただくことです。



そもそもブラッシングはなぜ大切なのでしょうか?

ブラッシングは歯や歯茎、ひいては全身の健康を守るために一番必要なことです。

虫歯や歯周病はお口の中の細菌によって引き起こされます。

口腔内には多数の常在菌がありますが、虫歯菌のミュータンス菌は食べ物の糖分によって増殖し、粘り気のあるプラークとして歯にこびりつきます。同時に酸を放出して歯の表面のエナメル質を溶かし始めます。(脱灰)

プラークの中には1/1000gに一億個を超える細菌が住みついていて、歯周病の原因になる歯周病菌も大量に存在しています。この歯周病菌が歯の生え際にある溝(歯周ポケット)にたまっていくとそこからまず歯肉の炎症を起こします。歯茎が赤くはれたり、歯磨きで出血したりしてきます。

そのまま放置されますとやがてポケットはじわじわ深くなっていって歯根膜、歯槽骨といった歯を支えている組織が破壊され歯がぐらついてきたり不快な症状が次々と現れてきます。

これらの破壊的なことが時間をかけてゆっくりとしかも自覚症状のないまま進行してゆくのが歯周病の恐ろしいところです。



さてこうした虫歯や歯周病を予防する要はプラークを除去すること、すなわち、毎日のブラッシングであることがご理解いただけたと思います。

プラークはうがいや歯磨き粉をつけてサッとひとみがきくらいではまったくとれないのです。

効果的なブラッシングをマスターしよう

効果的なブラッシングとはどういったものでしょうか。

まず歯の表面にブラシの毛先を当てて横方向に細かく動かすスクラッピング法という方法が基本になります。

2~3本の歯を集中的に磨く。5~10秒磨いたら次の2~3本に移る、といったやり方でやってみてください。

あちこちブラシを移動しないことが肝要です。



多くの方に見られる歯ブラシの大きな動きは歯の豊隆部だけが磨かれ、歯と歯の間には届きません。歯の染め出しによるブラッシング指導をしていて一番多いのが、歯と歯の間がほとんど磨けていないこと、そして歯の生え際が磨けていないことです。こうした場所に多く虫歯が発生してきます。

この辺りを念入りに磨くにはまず最初は鏡を見ながらブラシがどこに当たっているか確認することと、ブラシの動きが大きすぎないか自分の目で確認しながら行うことが大事です。



ブラッシングの際、大量の歯磨き粉をつけて磨き始めるとアワや唾液がいっぱい出てきてゆっくりと磨いていられませんね。できればつけないかほんの僅かつけて磨いてみてください。



通常のブラシでは完全には磨けない歯と歯の間ですが、歯の間の空間がすいている場合は歯間ブラシを、隙間が見られない場合はデンタルフロスを使うのがお勧めできます。

歯石の一番つきやすいところが下の前歯の裏側です。

ここはとても磨き辛いところですが、歯ブラシを盾にして搔き出すように一本一本磨くと取りやすいですね。



歯ブラシの持ち方は、鉛筆を持つように短めに持つと小刻みなブラッシングがしやすいと思います。



プラークが残りやすく歯周病の原因となる歯の生え際のブラッシングについて。

ブラシの毛先を歯の根元と歯肉の両方に当てて歯肉が痛くない程度の強さで小刻みに横に振動させるイメージです。

歯肉も磨くという感覚でやってください。

ここでブラシの硬さですが、今の歯茎に当てて振動させて磨く方法で磨くときにヒリヒリしてしまうようでは硬すぎるか当て方が強すぎることになります。

一般的に硬めを好む方が多いですが、これは短時間ですっきりした感じが得られるからでしょう。しかし硬いブラシでガリガリ力を入れて磨き続けると歯が削れていき、知覚過敏症の原因となります。

どのくらいの硬さが適当か、メーカーによる違いもあるので一概には言いにくいですが、硬さの表示としては「普通」を選び、大きさはあまりブラシのヘッドが大きくないものをお勧めしています。



ブラッシング時間は本当に人によってまちまちですが、今までご説明した方法で2~3本の歯を5~10秒間こすって次の2~3本で歯の表と裏、上下の全部の歯を磨くとおそらく10分くらいはかかります。

日常の中で10分連続で磨くことが難しいようでしたら、一日のトータルで10分以上というのが一つの目安かと思います。

家で過ごす時間が増えたのでしたらその時間を生かさない手はありません。

一度この方法で10分間磨いてみてください。

ブラッシングのあと軽く1回うがいして舌先で歯に触れてみてください。今までと違ったツルッとした感触になっていませんか?このすっきり、すべすべした歯の表面の感覚を知るというのがとても大切です。

毎日この感覚が得られるように頑張ってみてはいかがでしょうか?



まず歯磨き粉をつけないか、わずかな量で時間をかけて磨く。

軽くゆすいだ後今度は歯磨き粉を適量つけてフッ素を塗り付ける感じで全体に軽く磨いて一度だけ軽くうがいする。

そのあとは飲食をしばらく控える、というのがとても大切です。



現在テレワークや自宅待機で、お家で気ままにおやつなど食べながら仕事や家事をする習慣が出来ていませんか?

これは本当に虫歯になるリスクを上げてしまいます。

繰り返し虫歯を作ってしまう方に共通する傾向とは

今まで多くの方の虫歯治療を通じて、虫歯の多い方、繰り返し虫歯を作ってしまう方に、生活全般についてお話を伺ってきました。こうした方々に共通する傾向とは何でしょうか?

それは仕事をしながら飲食できる環境(職場)にあるということです。つまみ食いしながらデスクワークする、缶コーヒーを飲みながら車を運転し続ける、などの日常です。



食べ物の糖分からお口の中のミュータンス菌が酸を生成し、エナメル質が脱灰し始めることを考えるとなるべく早く歯磨きをしたいところですが、実際は不可能なことが多い、にもかかわらず簡単に虫歯にならないのはなぜでしょうか?

それは唾液の働きで、そうした食べ物のカスや酸を洗い流してくれ、また唾液中のカルシウムやリンが脱会した歯の表面を修復してくれる(再石灰化)からです。

しかしダラダラと食べ続けたり、甘いものを飲み続けたりすればそうした唾液の作用も十分に働くことができませんね。





これに関連して、料理に携わるお仕事の方々、シェフやパティシエそのほか食品開発などで試食や試飲を繰り返すような職業の方々は実に多くいらっしゃいますが、こうした方々は虫歯と縁が切れない傾向があります。

いったん治療が終わった歯が暫くするとまた虫歯になるとか、

治療で入った詰め物やクラウン、義歯のせいで味覚がいまいちわかりにくくなったとかのお悩みに直面すると、お口の健康にとってハードな職業であることを痛感します。



こうした方々にアドバイスできるとすると、先ずお仕事が一段落した時に、歯磨きをつけないでブラッシングすることができれば一番良いです。しかしそれが不可能でもうがいを繰り返すだけでもずいぶん違います。

歯磨き粉でもあまり味覚に影響しないものもありますので試していただくと良いと思います。

そして一日の終わりには念入りに時間をかけて磨いていただくことです。

こうした日常のうがいやブラッシングの習慣を積み上げていくことで少しでも虫歯のリスクを減らすことができます。



ブラッシングに興味を持たれた方にはぜひ染め出し液によるブラッシング状況の確認と染め出された部分のブラッシングをお勧めします。染め出し液は医院でも販売しています。



ブラッシングはホワイトニング後の白い歯の維持の為にもとても大切な要となります。詳しくはホワイトニングの項をご覧ください。

また詰め物や被せ物、義歯などによる味覚の問題は別項でお話します。